【GPT机翻】战国小町苦劳谭 (戦国小町苦労譚)- 124 [千五百七十五年 二月下旬]

时间:2023-04-30 23:15:26 来源: 哔哩哔哩

书名 战国小町苦劳谭

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(资料图片)

作者: 夹竹桃

原作:http://ncode.syosetu.com/n8406bm/

翻译工具:ChatGPT

*机器输出的翻译结果UP未做任何修正,仅供试阅。标题章节号为原翻译版的顺延。*

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千五百七十五年 二月下旬(*原文网页序列号 - 141)

天正二年は、信長が岐阜城で新年を祝う最後の年となる。信長の安土移転計画は既に周知されており、安土城落成までの仮御殿も完成し、移転に向けた細々とした準備も滞りなく進んでいた。

天正二年成为信长在岐阜城庆祝新年的最后一年。信长的安土迁移计划已经得到周知,临时行宫也已经完成,小而详细的准备工作也在顺利推进,以迁移为目标。

何かと慌ただしい年末年始を皆が安らかに過ごせるようにと、安土への移転予定日は新年十五日頃となっていた。信長が去った後の岐阜城へは、後継者である信忠が入り、岐阜を治めることとなる。

为了让大家能够在忙碌的年末年始期间得到安慰,安土城的迁移日期定于新年左右。信长离开后,继任者信忠将入驻岐阜城,并统治着岐阜。

「元日だけはゆっくりできるね」

"元日只能慢慢地享受"

例年元日には静子の配下も殆どが実家へと帰省する。残留する者は帰る家がないか、もしくは帰るつもりがないかのどちらかとなる。静子はここが家であり、彩は帰る家を持たない。去年までは二人きりの正月であったが、今年は四六と器が加わり、少し賑やかな雰囲気となっていた。

通常新年的时候,静子的下属们大部分都会回到他们的家中。留在公司的人要么没有家可回,要么就是不想回家。这里对静子来说是家,而彩则没有家可回。去年是两个人度过的新年,但今年增加了四六和器皿,气氛有点热闹。

家人たちについても最低限の人数を残し、他は実家へと帰らせた。常時はともかく、正月の間ぐらいはゆっくり休んでほしいという、静子からの心づくしであった。

留下最少的家人,让他们回到故乡。静子希望他们可以放松一下,特别是在新年期间。

屋敷の規模に対して住人が少ないため、物音すら聞こえない中、静子は傍らに寝転がっているヴィットマン達を撫でていた。

由于住户数量远远未达到庄园的规模,即使有任何声响,静子也听不到,她躺在一旁抚摸着伏特曼和他的同伴们。

ヴィットマンファミリーの中でも父母に当たるヴィットマンとバルティは、近頃横になっていることが多い。それもそのはず、今やヴィットマンファミリー全体が老境に達している。

在韦特曼家族中扮演着父母角色的韦特曼和巴尔蒂最近经常躺着。这也不足为奇,毕竟现在整个韦特曼家族都进入了老年阶段。

ヴィットマンとバルティに関しては出生日が判らないため、年齢は推測するしかないのだが、人間で言えば八十歳以上に相当するだろうとみつおが言っていた。

关于维特曼和巴尔蒂,因为他们的出生日期不确定,所以我们只能推测他们的年龄,但是光之三人组说,如果按人类的标准来算,他们应该都已经超过了80岁。

ウルフドッグという種を残したためか、飼育下に置いたことで本能が薄まったのか、ヴィットマンファミリーには純血の後継者が絶えてしまった。

保存了狼犬这个品种,或者因为被人类饲养而本能变得淡薄,维特曼家族失去了纯种的后继者。

ここにいるファミリーが全てであり、彼らが生を終えた時、彼らの一族は潰えることになる。

这里的家庭就是全部,当他们离开人世的时候,他们的家族也将灭亡。

「お前も、もうお爺ちゃんなんだよね。ずっと一緒に居られると思っていたけど、生物としての寿命だけはどうしようもないんだね……。その時の準備はしているけど……まだ使わせてほしくないな」

"你也已经是一个老爷爷了。虽然我一直以为我们可以一起呆在一起,但生物的寿命是无法避免的……虽然我已经做好了那时的准备……但我还不想使用它。"

人間に限らず、老いたものと残されるものの生活は切ない。生命力が生み出す荒々しさは鳴りを潜め、ただ穏やかにひっそりと最期に向かって着実に歩んでいく。

不仅是人类,老化的事物和留下的事物的生活都是令人伤心的。 生命力创造的粗犷已经消失了,它们只是静静地,安稳地走向最后一刻。

静子の後を追いかけることをやめ、それでも静子の居場所を守って待っていてくれるヴィットマンの老いに向き合うのはつらい。しかし、いつか確実に訪れるその時を、何の準備もしないまま迎えるのではなく、最期まで安らかに過ごせるよう腐心するのが静子なりの筋の通し方であった。

停止追逐静子,而面对老去的维特曼,守护着静子的位置是困难的。然而,不是毫无准备地等待最终到来的时刻,而是努力使自己能够安详地度过,这就是静子一直以来的信念。

ヴィットマンに続いて、カイザーやケーニッヒなど順に頭を撫でていく。流石にカイザー達、第二世代の寿命には幾分猶予があるが、それでもアーデルハイトやルッツの顔つきから精悍さが失われ、優し気な風貌になってきている。

维特曼之后,依次抚摸凯撒和肯尼希的头。尽管凯撒等第二代还有一定的寿命余地,但从阿德尔海特和卢茨的神情来看,他们的精悍感正在逐渐消失,变得温和可亲。

「飼い主の宿命か……。頭では解っていたつもりだったけど、想像以上にツライね」

"养主的宿命吗......。虽然我以为自己理解了,但比想象中还要辛苦呢。"

中学時代の友人が、生まれた時から一緒に育ってきた愛犬との別れを語っていたのを思い出す。傍にいるのが当たり前の、自分の半身とも呼べる家族が去っていく。

中学时代的朋友谈起了和同伴犬从出生一起成长并别离的故事,让我想起了。随着自己的家人,与自己紧密相连的伴侣突然离去,这是多么异常难受的一种事。

その時は、友人の苦悩と悲哀を理解したような気になっていたが、やはりどこか他人事だったのだろう。これほどまでに身につまされるものだとは思わなかった。

那时,我感觉理解了朋友的痛苦和悲伤,但仍然感觉有点不关自己的事。我没有想到会如此深地感受到它。

「私は、お前たちの主人として相応しい人物になれたかな?」

“我能成为你们的主人吗?” translated to Simplified Chinese would be: “我能成为你们适合的主人吗?”

声に出して訊ねてみるが、当然応えは返らない。これが感傷に過ぎない事は判っているが、そう問わずにはいられなかった。

大声问,自然没有回应。我知道这只是感伤,但还是忍不住要问。

そんな静子の心情を察したのか、バルティが静子の手を舐める。彼女の体温と親愛の情が伝わってくるようだった。

那时,巴尔蒂似乎察觉了静子内心的情感,开始舔她的手。似乎感受到了她的体温和爱意。

「そっか……ありがとうね」

“是啊……谢谢你啊”

彼女は何も言わないが、ただあるがままの静子を群れのリーダーとして認めてくれているのが判った。静子は薄く笑みを浮かべると、バルティの首に手を回して抱き着いた。

她虽然什么也没说,但我明白她已经承认静子就是群中的领袖了。静子微微一笑,环抱着巴尔蒂的脖子,靠在他怀中。

普段は過剰な接触を嫌うバルティだが、この時ばかりはされるがままに体を預けてくれていた。

平时反感过度的接触,但这时却毫无拘束地向他倚靠。

正月二日目以降は例年通り、慌ただしく過ぎていった。特に岐阜城では信長の転出に伴い、信長・信忠双方に挨拶出来る絶好の機会とばかりに、例年以上の長蛇の列が形成された。

正月初二之后一如往常忙碌地度过。特别是在岐阜城,由于信长离开,这是一个与信长和信忠都可以打招呼的绝佳机会,人们排成了比往年更长的队伍。

挨拶に応じる信長たちが忙しいのは勿論だが、裏方を務める近侍達はまさに席をあたためる暇もない程に忙殺されていた。

回应问候的信长们自然很忙,但担任幕僚的近臣们更是忙得连座位都没时间热热。

「皆様がご多忙だと思い、挨拶を控えておりましたのに、ご本人が乗り込んでくるのは如何なものかと……」

“大家都非常忙,我本想避免打扰你们,所以没有打算打招呼,但他亲自过来还是有点过了吧......”

「何を申す。安土へ移らば、こうして気軽に訪ねることも叶わなくなる。名残を惜しんでも罰は当たるまい」

「你在说什么?如果我们搬到安土去,像这样随意拜访就不可能了。哪怕留恋回忆,也不会受到惩罚吧」。

岐阜城の喧噪を裏方から聞いていた静子は、落ち着いた頃に挨拶に伺うと文を送り、邸宅で控えていた。静子が向かえば、静子目当ての混雑が加わり、さしもの近侍衆たちも来客を捌ききれなくなる。

听到岐阜城的喧哗声,静子在幕后候着,等到局势平息后再送信去拜访,待在邸宅中。一旦静子前来,原本的繁忙不堪变得更加拥挤,就连近侍们也难以应对来客的数量。

他の者ならばいざ知らず、充分に信長の覚えが目出度い静子は、我先に挨拶に赴く必要性が薄い。それでなくとも大変な思いをしている裏方に対して、火に油を注ぐような真似をしたくなかった。

其他人就不说了,因为足够让信长铭记的静子没有必要赶在前面打招呼。对于已经在背后辛苦工作的人,她不想加坏事情。

そうして岐阜城が落ち着くのを待っていたところへ、夜が更けてからとは言え、信長本人が静子邸へと押しかけてきた。

就在等待岐阜城恢复平静的时候,虽然已经很晚了,但信长本人还是闯进了静子的府邸。

「不用意に岐阜城を空けられては、上様の裁可を待つ裏方が困るのでは?」

“如果不经意地让岐阜城空下来,那么在等待上司批准的幕后人员会感到困难。”

「当分は挨拶尽くしで、決裁なぞ必要ない。それよりも早う『けえき』とやらを出さぬか」

"暂时只需要问候,不需要决策。现在应该尽快提出「衣服」这样的东西。"

思わずため息が漏れるが、既に来てしまっている以上は仕方ないと割り切り、静子はケーキ作りを再開する。

不禁叹了口气,但自己已经来到这里,只能认命了。静子重新开始制作蛋糕。

現代の品質には遠く及ばないとは言え、チョコレートが出来たのだ。幸いにも新鮮な鶏卵は売るほどあるため、卵とチョコレートだけで作れるガトーショコラを作ろうと考えていた。

虽然无法达到现代质量的水平,但巧克力已经制成了。幸运的是,新鲜的鸡蛋数量足够多,因此我打算用鸡蛋和巧克力制作巧克力蛋糕。

静子邸のいつもの面々に対して、チョコレートケーキを作ると宣言したのを聞きつけたようなタイミングで信長が登場し、現在に至っている。

在静子府里宣布要做巧克力蛋糕给那些常来的人吃时,听说信长出现了,一直到现在。

とはいえ、ケーキ作りは時間が掛かるため、信長に待って貰う間に摘まめるものも出そうと、手軽に作れるパンケーキを先んじて提供していた。

然而,由于制作蛋糕需要时间,为了在等待信长的时候能够提供一些小食,他们先提供了简单易做的松饼。

静子がチョコレートを湯煎で溶かしている間、長可が極寒の氷室でメレンゲを立てている。冷蔵庫などという便利なものはないため、歯の根が合わないような環境で卵白を混ぜ続ける必要があった。

在静子用水浴加热融化巧克力的期间,长可在极寒的冰室中搅打蛋白饼干。由于没有像冰箱这样方便的设备,因此必须在牙齿咬合不适的环境中不断搅拌蛋白。

「静子の処は、退屈とは無縁よのう」

「静子的地方与无聊无缘呀」

厨(くりや)に立つ静子の後姿を眺めつつ、濃姫が呟いた。追加人員は信長だけだったのだが、パンケーキの焼ける匂いに釣られてか、濃姫や市、茶々に初も現れて居座った。

看着站在厨房的静子的身影,浓姬嘀咕了一句。信长是他们唯一新增的成员,但是被煎饼的香味吸引,浓姬、市、茶々和初也都来到厨房,然后坐了下来。

流石に乳飲み子である江に与えるわけにもいかず、乳母と江のみが別室で待機することとなった。

由于江还只是一个吃母乳的婴儿,给她喝水显然是不行的。因此,只有奶妈和江被安排在不同的房间等候。

取り急ぎ貴人分のパンケーキが焼きあがると、それぞれの膳へと載せられ運ばれていく。焼きたてのパンケーキが立てる食欲を誘う香りに、胃袋が音を立てて軽い抗議をするが無視して、粗熱をとったチョコレートに卵黄を混ぜて練っていく。

当紧急烤完贵人部分的薄煎饼时,它们被放在各自的盘子上并被搬走了。新鲜烤制的薄煎饼散发着诱人的香气,引起胃部的轻微不适,但被忽略了。然后,将巧克力和蛋黄混合并慢慢搅拌,直到它们冷却下来。

「し、し、静子! こ、ここ、これ! 出来たぞ」

"静子!这里,这个!搞定了" (Simplified Chinese)

そこへ折よく長可が現れ、辛うじてメレンゲと呼べそうな物体を持ってきた。礼を言いながら受け取り、長可の状態を窺えば、冷え切ったのであろう唇は紫色になっており、歯の根が合わず上手くしゃべれなくなっている。

正好长可出现了,他拿着一块勉强能称作蛋白饼干的物品。我接过礼物并表示感谢,但观察长可的状态,他的嘴唇因为寒冷变成了紫色,而且由于牙根不齐,说话变得困难起来。

「良くここまで仕上げてくれたね、ありがとう勝蔵君。お風呂の用意がしてあるから、行っておいで」

“做得很好,谢谢你,胜藏。已经准备好了洗澡了,你先去吧。”

精糖技術も甘く、ハンドミキサーなどという気の利いた物がない状態で、キメの細かいメレンゲを作るのは至難の業だ。加熱しながら作るスイスメレンゲを利用するという選択肢もあったのだが、ふんわりとしたケーキにするためどうしてもフレンチメレンゲが欲しかった。

精糖技术也很棘手,没有像手持式搅拌器这样巧妙的工具,制作出细腻的蛋白霜异常困难。虽然可以选择使用制作瑞士蛋白霜的方法来加热制作,但是为了制作松软的蛋糕,我非常想要法式蛋白霜。

体を抱きかかえるようにして風呂場へ向かう長可を見送り、静子は一応ツノが立っている状態のメレンゲを数回に分けてチョコレート生地に混ぜ入れる。

看着长可抱住身体朝着浴室走去,静子将已经竖起小角的蛋白霜分批混入巧克力面糊中。

メレンゲを潰さないようにサックリと混ぜ合わせると、事前に用意しておいた金型に菜種油を薄く塗ったところへ、チョコレート生地を流しいれてトントンと叩いて空気を抜いた。

轻轻地混合巧克力面糊,不要压扁蛋白霜。然后倒入预先涂上菜籽油的烤模中,轻敲几下排出空气。

「静子はこれから『けえき』を焼くようじゃ、わしらはこれを食べて待つとしよう」

「静子如果要烤'可饱',我们就吃着等她吧。」

信長は湯気を立てるパンケーキにたっぷりと蜂蜜をかけ、箸で器用に二つ折りに畳んで口へと運び、大きくかじり取った。

信长把加了大量蜂蜜的蒸汽饼干用筷子巧妙地对折到口中大嚼了一口。

『じゅわり』と染み渡る蜂蜜と、それらをどっしり受け止めるケーキ生地の香ばしくも甘やかな味わいに、思わず頬が緩んだ。

染入味道的蜂蜜和支撑它的蛋糕,散发着诱人的香气,令人感到心满意足。

「うまい!」

"好吃!"

ガラス製品の副産物である重曹がたっぷりと入れられたパンケーキは、現代のそれと比べても遜色のない出来栄えであり、信長だけでなく濃姫たちも目を見開いて味わっていた。

玻璃制品的副产品-苏打在松饼里大量使用,制作出来的松饼与现代的几乎没有区别,并且不只是信长,濃姬等人也睁大眼睛品尝着美味。

早くも一枚を平らげた信長は、新たな一枚に別皿に盛られたクリームと柿のジャムを塗って頬張っている。甘党なのは相変わらずだなと、静子はどこか微笑まし気に眺めつつ、余熱してあった石窯へとケーキの金型を投入した。

快速地吞下了一块饼干的信长,用新的盘子盛着奶油和柿子酱涂在了另一块饼干上并咀嚼着。静子看着他吃的很香甜,心中微笑,把蛋糕模子放在已经加热好的石窑里。

「甘いものと一緒に飲むと、この渋い紅茶とやらも格別よの。僅かに酸味を感じるのが、かえって好ましい」

「如果配上甜食一起喝,这苦涩的红茶就显得格外出色了。略带酸味反而更加可口。」

ティーカップに入った紅茶を揺らしながら市が呟いた。華奢な取っ手のついたティーカップに尻込みしていた市だが、今では優雅に使いこなしている。

市摇着装在茶杯中的红茶喃喃自语着。她曾经被带有华丽把手的红茶杯吓到,但现在已经能优雅地运用它了。

「あっまーい」

甜蜜的

「あまいー」

"「あまいー」" translates to "甜味" in Simplified Chinese.

茶々と初は声に出しながら、瞬く間にパンケーキを平らげた。メインのチョコレートケーキに対する前座であり、大人と違って量を食べられない彼女たちのパンケーキは小さい。

茶々和初一边发出声音,一眨眼就把薄煎饼吃完了。这是巧克力蛋糕的前奏,与成年人不同,她们吃不了多少薄煎饼,只有小份量。

早々に食べ終えてしまい、大人たちのパンケーキを物欲しそうに眺めるものの、より美味なるチョコレートケーキの登場をおとなしく待っていた。

早早地吃完后,望着成人们的煎饼,看起来很贪心,但还是静静地等待更美味的巧克力蛋糕出现。

客間の様子を窺いながら石窯の様子を見ていた静子は、取り出したチョコレートケーキに竹串を突き刺し、生焼けの生地がついてこないのを確認して微笑んだ。

窃窃私语间,静子一边窥视客厅的情况,一边观察着石窑,她将巧克力蛋糕取出,用竹签刺了一下,微笑着确认蛋糕熟透了,没有任何未熟的蛋糕馅。

チョコレートの品質の問題か、メレンゲが十分でなかったのか判らないが、やや見てくれが悪いものの本邦初のチョコレートケーキが無事に焼きあがった。

不知道是巧克力质量的问题还是蛋白霜不够,但是虽然外观有些不好看,但是本国首款巧克力蛋糕仍然成功烘焙完成。

静子は金型から取り出したケーキに包丁を入れ、1ホールを八等分に切り分けた。客間に居座る貴人は5人、大役を務めた静子と長可が受け取るのは当然として、最後の一切れの行方が波乱を生みそうであった。

静子从模具中取出蛋糕,用刀切成八块。在客厅里,有五个贵人,静子和长可担任大任务,最后一块的命运似乎会引发风波。

「……なんとも濃厚で、香り高い味わいよ」

"真是浓郁且香气十足的味道啊。"

「南蛮の言葉でガトーショコラ(フランス語でチョコレートケーキの意味)と申します」

“我用南蛮语言说,我的名字是Gâteau au chocolat,即巧克力蛋糕的意思。”

本邦初ということで、真っ先に口をつけた信長は絶句し、しばらく間をおいて何とか感想を搾りだした。チョコレートの持つ蠱惑的な香りと、豊富な油分と糖分がもたらすパンチ力が信長を打ち据えたのだ。

由于这是本国的首次,信长第一个尝了口巧克力后感到非常震惊,过了一会儿才勉强说出了感想。巧克力独特的香味,以及丰富的油脂和糖分带来的强烈力量打击了信长。

信長と静子のやり取りをよそに、濃姫たちもケーキに手を付けて、その味わいに舌鼓を打っていた。茶々と初にはチョコレートの苦みが強かったのか、パンケーキ用のクリームを塗って頬張っている。

在信长和静子的对话中毫不在意,浓姬们也在享受着蛋糕的美味,品尝着甜点带来的美妙口感。茶茶和初吃起巧克力时似乎觉得苦味有些强,于是现在涂上了薄薄一层蛋糕奶油,兴致勃勃地品尝着。

「静子や、これはもっと作れぬのか?」

“静子,这个你不能再做一些吗?”

材料自体は存在するが、メレンゲを作る作業が過酷であり、そう易々とは作れないと説明すると、全員の目がケーキ皿に残された最後の一切れに釘付けとなった。

原材料虽然存在,但是要制作蛋白酥非常困难,不容易做出来。当我这么解释时,大家的目光全都集中在蛋糕盘里留下的最后一块了。

静子は自ら火の粉を被りに行く愚を避け、さっさと退散したが、幸運をつかみ損ねた誰かの手によって、再び長可が氷室へ送り込まれることになったのは言うまでもない。

静子为避免自己被火花烧伤,毅然撤离,未能抓住幸运良机,结果,便被某个错失良机的人送回到了冰室中。

多忙を極める信長がわざわざ出向いたのだ、ケーキだけで満足するはずもなく、ワインやビールのほか、それに合うツマミ類までもを土産と称して持ち去っていった。

多忙的信长特地前来,不仅不可能只满足于蛋糕,而且还带了适合搭配的葡萄酒、啤酒和小吃作为礼物。

岐阜と尾張の距離だからこそ、気軽に赴くことも叶うが、安土へと移れば食は言うに及ばず、様々な生活様式に制限を受けることになる。

正因为岐阜和尾张的距离,人们可以轻松前往,但是如果前往安土的话,不仅仅是饮食,还会受到各种生活方式的限制。

冷蔵や輸送技術が低いため、天下人であろうともこればかりは何ともしようのない宿命であった。

由于制冷和运输技术的不发达,无论成为天下人也无法改变这种无可奈何的命运。

(安土城下でもケーキを作れるようにしろとか言いかねないな……)

(甚至还可以在城下制作蛋糕,我不禁会这样说……)

安土に移れば信長の奔放さも鳴りを潜めるかと考えたが、何故か信長が変わらず無茶ぶりをする未来が想像できてしまい、静子は考えることをやめた。

迁回国土,认为信长的放纵也会减弱,但不知为何可以想象到信长仍会毫无顾忌地挑战未来,静子于是停止了思考。

嵐のような訪問をしのぎ切った静子であったが、天は彼女に休息を与えなかった。

静子度过了类似暴风雨一样的访问,但是命运并没有给她任何休息。

「……ようやく、か」

"终于了,差不多了"

届けられた文を読んでいた静子は、万感の思いを込めて呟いた。文には天下五剣の最後の一振り、数珠丸(じゅずまる)入手の報が記されていた。

读着收到的文书,静子含着万千感慨喃喃道。文中记载了拿到天下五剑中最后一把数珠丸的消息。

童子切(どうじぎり)安綱(やすつな)、鬼丸(おにまる)國綱(くにつな)、三日月(みかづき)宗近(むねちか)、大典太(おおでんた)光世(みつよ)の四振りは比較的早期に静子の許へと集まっていた。

童子切安綱、鬼丸国綱、三日月宗近、大典太光世这四把刀相对较早就聚集在静子那里了。

しかし、最後の一振りである数珠丸(じゅずまる)恒次(つねつぐ)の入手は困難を極めた。何しろ数珠丸は日蓮上人の遺品であり、他の遺品と一緒に長らく身延山(みのぶさん)久遠寺(くおんじ)に退蔵されていた。

然而,最后一把数珠丸恒次的获得极其困难。毕竟,数珠丸是日莲上人的遗物,与其他遗物一起长期存放在身延山久远寺的仓库中。

静子が地道に積み上げた文芸保護の実績が評価され、朝廷からの働きかけもあって、この度ようやく数珠丸恒次のみが世に出されることとなった。

静子辛勤地推行文学保护工作的成果受到赞赏,同时受到朝廷的推动,数珠丸恒次才得以面世。

ここに至るまで長く険しい交渉が行われていたであろうことは想像に難くない。万難を排して結果をもぎ取った朝廷の担当者と、最終的に折れてくれた久遠寺の僧侶に静子は感謝した。

想象很难想象在此之前进行了漫长而艰难的谈判。静子感谢朝廷代表排除了万难并取得了结果,以及最终妥协的久遠寺僧侣。

「しかし、勝蔵君が大典太光世を要らないと言うとは……慶次さんや才蔵さんも受け取ろうとしないし」

“但是,如果胜藏说不需要大典太光世……庆次和才藏也不会接受它。”

天下五剣を揃えたものの、死蔵させたのでは意味がない。資料を残した上で、現物を配下の将へと下賜しようとしたのだが、誰も受け取ろうとしなかった。

集齐天下五剑无意义,如果把它们藏起来。我试图在留下资料的同时将这些现物下赐给我的下属将领,但是没有人愿意接受。

配下の将に対する対外的な褒美として、慶次と才蔵には既に天下五剣を下賜しているのだが、皆の前で下賜されたという事実だけが重要であり、慶次も才蔵も刀本体は静子邸の蔵に保管したままとなっていた。

作为对手下将颁发的对外奖励,信长已经向景次和才藏赐予了天下五剑,但重要的只是在所有人面前颁发奖励的事实,景次和才藏都将剑放置在静子邸的库房中,没有带走。

一応所有権が移っているためか、時折本人達が手入れをしているようだが、帰省の折にも持ち帰る様子すらない。そして今回の長可に至っては、そもそも下賜するというポーズすら不要だと言い切った。

或许是因为所有权已经转移,所以偶尔本人们似乎会打理一下,但在回乡时甚至没有带回的迹象。而这次的长可,他干脆说根本不需要摆出赐予的姿态。

よって三日月宗近のみ、普段から足満が所有しているのだが、他の四振り及び大包平(おおかねひら)という名刀を、刀を振るうことのない静子が所蔵することになってしまった。

因此只有三日月宗近,平常被足満所有,但其他四挥和名剑大包平却被平常不挥剑的静子所拥有。

足満自身は静子が望めば、三日月宗近を譲る気でいたのだが、静子としても実用品を死蔵させるのは忸怩たる思いがあるため、引き続き足満に管理してもらうこととした。

足满本来愿意将三日月宗近让给静子,但静子自己也有些不好意思让实用品闲置,所以还是决定由足满来管理。

「まあ、良いか。歴史的資料の散逸が防げただけでも良しとしよう。それよりも、領地からの陳情が……」

“嗯,也好。能够阻止历史资料的散失已经很不错了。比起这个,来自领地的申诉更为重要……"

「しずこぉ!」

"静子!"

陳情書を確認しようと、静子が文机に手を伸ばした瞬間、部屋を隔てる襖が乱暴に開かれた。このような狼藉をするものは、屋敷の中でも数人しかおらず、自ずと犯人は知れた。

当静子伸手查看陈情书的时候,隔断房间的推拉门被不知名人士粗暴地拉开了。在屋子里能这么横冲直撞的人并不多,因此犯人也就不言自明了。

「しごとをしてはならぬのじゃ。おじうえがそうおっしゃっていた!」

“不可工作。叔父曾这么说!”

得意満面といった様子で胸を張るのは茶々であった。仕事人間の静子に対して外交を取り上げた程度で休むようなら苦労はない。そう考えた信長が、静子のお目付け役として茶々を抜擢した。

张扬得意的表情使茶叶感到不满。对于工作狂静子来说,如果她接管了外交事务,就没有休息的机会。信长考虑到这一点,选择茶叶作为静子的看守。

敬愛する伯父の信長から大役を仰せつかったことと、茶々自身が静子に構って貰えることを楽しんでいることが災いし、静子が仕事をしようとすると、どこからともなく茶々が現れるのだった。

敬爱的叔父信长托付了我一个重要任务,另外茶々还喜欢让静子陪伴自己,这导致每当静子想工作时,茶々总是突然出现在她身边,成为她的阻碍。

子供であるため集中力が長続きしないという欠点はあるものの、天性の勘の良さを発揮してタイミング良く邪魔をしに現れる茶々に、さすがの静子も手を焼いていた。

虽然作为孩子缺乏持久的集中力是一项缺点,但是茶々展现出与生俱来的直觉,恰好在关键时刻闯入干扰,令静子也不得不感到头疼。

「これは仕事じゃないよ。お手紙を読んでいるだけ」

“这不是工作。我只是在读一封信。”

「ならぬ! そのかおはうそをついているかおじゃ」

"不是那样的!你的脸上写满了谎言。"

思わず目が泳いでしまう静子を見とがめた茶々は、静子の言葉を嘘だと断じた。

看到静子目光游移不定,茶茶认为她说的话是谎言。

「それはさておき、茶々様。今の時間は座学のはずでは?」

“撇开这个不说,茶茶大人。现在不应该是课堂学习的时间吗?”

義務教育の有用性を身をもって示した静子だけに、静子邸に滞在する一定年齢の人間は漏れなく教育が施される。本来ならば同年代の子供らと机を並べて勉学に励んでいるはずの時間であり、茶々がここにいることはサボタージュを意味する。

展示了义务教育的有用性的静子在她自己的房子里接待那些达到一定年龄的人,他们都会接受教育。这本来应该是和同龄人一起学习的时间,茶茶在这里意味着破坏。

「べんきょうよりもおやくめがだいじ!」

"比起学习来,家务更重要!"

静子の指摘に茶々は目を逸らして嘯(うそぶ)いた。目を見て話さないのは疚しいところがある証拠、二人セットの初がいないことも考慮すると、一人だけ逃げ出してきたのだと推測できた。

茶茶听了静子的指责后嘴里喊了几句谎话,避开了静子的目光。茶茶不敢直视对方说话,这说明有什么问题,考虑到他们是两个人共同面对问题的,茶茶一人逃避了这个问题,这一点很令人疑惑。

「茶々様、このような場所におられたのですね」

"茶々大人,您在这样的地方啊" translates to "茶々大人,在这样的地方啊".

感情の起伏が感じられない冷ややかな声とともに、突然伸びてきた手が茶々の襟首を掴んだ。

伴随着冷漠的声音,感情波动无法感知,突然一只手伸出抓住了茶々的领子。

「うわっ! はいごからとはひきょうだぞ!」

"哇!从背后袭击是不公平的!"

「何を申されようが勉強を受けていただきます」

"无论您想说什么,都请接受学习"。

「はーなーせー!」

"「はーなーせー!」" translated to Simplified Chinese is "哈啰娜瑟!".

見事な手腕で茶々を拘束した彩は、茶々の抵抗を無視して彼女を引きずって去っていった。茶々の声は徐々に遠ざかっていき、廊下の角を曲がった辺りでぷっつりと聞こえなくなった。

彩用高超的技巧将茶々制服,并无视她的抵抗,将她拖走了。茶々的声音渐渐远去,在拐过走廊的角落处突然消失了。

「……陳情書、読もうかな」

"......看看要不要读陈情书"

一連の事件をなかったことにした静子は、文机に置かれた書類箱に手を伸ばし、一番上に置かれた陳情書を取り上げた。

忽略了一连串的事件,静子伸手到放在文档箱上的信箱,并拿起了排在最上面的陈情书。

一月下旬となり、信長は安土の仮御殿へと本拠を移した。空いた岐阜城へは信忠が入城し、信長の安土移転を知った人々は、遂に本願寺との決着を付けるつもりだなどと噂をしていた。

月底,信长搬到了安土的临时住处。信忠入城占据了空出来的岐阜城,听到信长搬家的消息后,人们纷纷传言说要和本愿寺决一雌雄了。

本願寺にとって、所詮は噂よと捨て置けるような状況では無かった。本願寺に残された戦力は紀伊門徒衆だけであり、他には西国に毛利などの協力者を残すのみとなる。

本愿寺并非仅仅是传言,可以将其丢在一旁不予理会。留在本愿寺的战斗力仅有纪伊门徒众,其余只能指望西国的毛利等协力者。

東国に根を張った門徒衆は、今となっては見る影もなく、到底戦力として期待できるものでは無かった。甲斐の武田や、東国の雄である北条に助けを求めようにも、間を遮る形で静子を擁する信忠が居座っている。

扎根于东国的门徒们现在已经看不到影子,根本不能指望他们成为战力。即使向甲斐的武田或东国的英豪北条求援,也被信忠阻挡在中间,因为他掌握了拥有静子的力量。

東国からの支援という片腕をもがれた形で、信長と対峙しなければならないという事実が、本願寺首脳部の頭を悩ませていた。

在东国失去了一只手臂的支持的情况下,与信长面对必须要面对的事实,让本愿寺的领导层感到烦恼。

「我らは滅びの瀬戸際に立っております」

我们正处于灭亡的边缘。

本願寺で開催された対信長の軍議の場に於いて、頼廉(らいれん)は現状をこう評した。弱気な姿勢だと皆は口々に非難したが、頼廉に一睨みされると口を閉ざした。

在本愿寺召开的对信长的军议中,依然对现状做出了这样的评价。虽然大家都口口声声地谴责他的消极态度,但是一旦被依然扫过一眼,他们都保持了沉默。

「皆も良く考えて頂きたい。我らは今まで全国に散らばった門徒衆に決起を促し、多くの兵力を動員出来た。しかし、織田の手によって各地の門徒衆は鎮圧され、今や本願寺門徒を名乗ることが憚(はばか)られる状態となった。一大拠点であった長島も加賀をも奪われ、地を追われた門徒衆が難民となって押し寄せ、今日(こんにち)の我らの窮状を作り出している。一方の織田は、それらの生産基盤を併呑して勢いをました。さりとて紀伊門徒衆だけでは織田を挫(くじ)くことなど敵わぬ上、多くの難民を抱える我らは、座していても死を待つのみというのが現状」

“我希望大家都好好思考。我们曾经鼓励全国各地的门徒们起义,动员了大量的兵力。但现在,由于織田的手段,各地的门徒们都被平定了,现在害怕自己是本愿寺门徒的身份。战略要地的长岛和加贺都已被夺走,逐出了这些难民,他们如今成为我们当前困境的原因。与此同时,織田会利用那些生产基础获得胜利。而仅有纪伊门徒根本无法击败織田,现在我们只能等待死亡。”

「しかし、飢えた信徒を見捨てる訳には……」

“然而,我们不能抛弃饥饿的信徒……” in Simplified Chinese.

「我々に残された選択肢は二つ。一つは全てを投げ打ち、織田を討つ徹底抗戦。もう一つは敗北を受け入れ、帝を介して調停を申し入れる。組織としての本願寺は潰えるが、宗教としては存続できよう、我らは解散させられ、石山本願寺(ここ)の明け渡しを迫られ——」

我们所剩的两个选择是:一是彻底对抗織田,放弃一切并打赢战争;另一个是接受失败,通过皇帝协调寻求和解。虽然本愿寺会因此被摧毁,但我们的宗教信仰仍能继续传承。我们可能会被解散,被迫放弃石山本愿寺的控制——

「ならぬ!」

不行!

頼廉が石山本願寺の明け渡しに言及した瞬間、とある人物がそれを遮って怒声を上げた。

当谈到让价钱在石山本愿寺里交出明显的时候,一些人会打断并愤怒地大喊。

声の主の名は教如(きょうにょ)。本願寺法主である顕如(けんにょ)の長男にして、織田との徹底抗戦を唱える急先鋒であった。彼と彼を支持する一派は、強硬に徹底抗戦を主張していた。

声音的主人名为教如。他是本愿寺法主顕如的长子,也是与織田进行彻底抗战的先锋。他及其支持者都坚决主张彻底抗战。

これが後に、本願寺を東西に割る悲劇を生むことになる。

这将导致本愿寺分裂成东西两部分的悲剧。

「一向宗の一向とは一意専心。行く道を曲げて、何が一向衆か! 進まば極楽往生、退けば無限地獄に落ちようぞ。我らに降伏という選択肢はない!」

「一向宗的一向就是一心一意。曲曲弯弯的道路,什么才是一向众!前进就可往生极乐,退缩就会陷落于无限地狱。我们没有投降这个选择!」

いつものように軍議が消極的になろうとしたところへ、教如が発破を掛けた。織田との一時和睦にすら難色を示す彼らは、実質的な敗北を受け入れる調停案など呑めるはずがなかった。

教如对消极的军事会议施以推动。那些甚至对与織田的短暂停战表示困难的人,不可能接受调停方案,实质上他们已经接受了失败。

しかし、現状を正しく認識している者にとっては、彼らの主張は誇大妄想の域にしか見えなかった。

然而,对于正确了解现状的人来说,他们的主张只能被视为夸大妄想的范畴。

「では、お尋ねします。如何にして織田を打倒するのですか?」

"那么,请问你们如何打败織田呢?"

「我らが信心を捨てぬ限り、御仏は必ずや本願へと導いて下さる! 心折れぬ限り、我らに負けはない!」

只要我们不放弃信仰,佛菩萨一定会引导我们实现愿望!只要我们不灰心丧气,就不会输给任何人!

「……それで往生出来たとしても、現世に残るのは屍の山でしょう。我らが門徒を失う度に、我らの力は弱まります。我らが弱れば織田だけでなく、他の寺社どもまでが敵に回りましょうぞ」

"即使我们能重生,现世也会留下无数尸山。每次失去门徒,我们的力量都会减弱。若我们变弱,不仅仅是织田,其他寺庙也会成为敌人。"

頼廉の指摘に教如は言葉を無くした。本願寺の敵は織田だけに限らない。今まで本願寺が虐(しいた)げてきた寺社勢力が、反逆の機会を虎視眈々と狙っていた。

赖廉的指摘让教如无话可说。本愿寺的敌人不仅仅是织田家。这些年,本愿寺曾经压迫的寺社力量,一直在虎视眈眈等待反抗的机会。

本願寺が勢力を失えば、寺社勢力は織田に迎合し、一向宗を徹底的に潰さんと敵対する可能性すらあった。

如果本愿寺失去了实力,寺庙的力量将迎合织田家,并可能与反对一向宗的敌对势力展开彻底的摧毁。

それ故に頼廉は、窮地にある今こそ慎重を期するべきだと主張していた。ここからは一歩間違うだけで、今までの協力者までが我が身可愛さから、織田へと寝返ることになる。

因此,頼廉主张在现在这个困境中应该更加谨慎。一旦出现差错,甚至过去的合作者也可能因为自己的安危而背叛他们,投降给织田家。

「しかし、本願寺を失っては、教義に殉じた者への面目が立たぬ」

"然而,失去本愿寺将使信仰教义坚守者失去脸面"。

尚も食い下がる教如だが、頼廉は既にいくさの落としどころを考えていたため、彼の耳には届かなかった。

尚未放弃的教如,但依赖廉已经考虑了战斗的结尾,所以他没有听到。

「現状で決断できぬというのであれば、私が一つ判断材料を増やしましょう」

「如果无法做出决断的话,那么我可以增加一项判断材料。」

「一体何を?」

"一体何を?" can be translated to Simplified Chinese as "到底是什么?".

「私自らがとある人物と会い、我らの行く末を占う情報を持ち帰りましょう。それを以て、尚も徹底抗戦するか、名を捨ててでも実を取り、生き延びる道を模索するかをご判断願いたい」

“我亲自会见了一个人,带回了关于我们未来的信息。请以此来决定是坚决抵抗,还是舍弃名誉取得实际利益,探索生存之路。”

「とある人物とは?」

"「とある人物とは?」" in Simplified Chinese is "「某个人物是谁?」".

教如が息を飲んで訊ねると、頼廉は一拍おいて答えを口にした。

教如呼吸一窒,问道,而頼廉则稍稍沉吟,接着说出了答案。

「織田が懐刀と恃(たの)む者。織田殿の最大の理解者にして、武田敗北の立役者。五摂家筆頭近衛家が娘、静子です」

「織田將軍的得力助手。他是織田將軍最好的理解者,也是武田敗北的主要推手。他的女兒靜子是五摂家之一的近衛家的首領。」

「なっ!」

"啊!"

静まり返った軍議の場が俄かに喧噪に沸いた。静子と言えば織田家の重臣であり、本願寺が呼びかけた織田包囲網の要(かなめ)たる武田軍を壊滅させた怨敵であった。

安静的军议场突然变得喧嚣起来。静子是織田家的重臣,是本願寺呼吁的織田包围网的核心人物,曾经摧毁了敌对的武田军队。

今も尚、本願寺を経済的に追い詰めつつある首魁(しゅかい)。信長と表裏を成す、織田家の顔となる人物であった。その静子と直接会うと、頼廉は宣言したのだ。

仍是现在,领头人正在经济上迫使本愿寺走投无路。他是织田家的代表人物,与信长相对立。当藤吉郎直接与静子见面时,他宣布了这一点。

これには、いつも冷静な顕如も驚愕し、頼廉の目をじっと見つめる。

这让一向冷静的顕如也感到惊讶,他凝视着依赖廉的眼睛。

「無論、面会が叶うとは限りませぬ。よしんば面会が叶ったとて、その前後で敵の罠に掛かり命を落とすやもしれませぬ。しかし、それを以て織田の悪行とし、本願寺の大義を喧伝出来ましょう」

“无论如何,面会并不一定会实现。即使有面会的机会,也有可能会在面会前后落入敌人的陷阱而丧命。然而,我们可以将此作为对織田的恶行,传扬本願寺的大义。”

「織田は配下が勝手にやったことと、言い逃れをするやもしれぬぞ」

「織田可能会为手下所独断独行的行为而无法辩解。」

「それは出来ませぬ。静子は織田家に深く根を張った大樹。それを我が身可愛さに切り倒せば、織田の屋台骨が揺らぎます。本願寺の重臣である私が命を懸けるだけで、他ならぬ織田が万難を排して私を守らねばならず、会談を終えるまで織田は動きを止めざるを得なくなる。会談が成って情報を得られれば、今後の判断材料が増える。どちらに転んだとて、我らに損はありません」

“这是不可能的。静子是深深扎根于织田家族的大树。如果我出于个人偏见将其砍倒,那么织田家族的根基将会动摇。作为本愿寺的重要成员,我只要拿命去搏一场,便能迫使织田家族不得不保护我免受委屈,而且在会谈结束之前,他们将不得不停下一切行动。如果会议成功,我们就能获取更多的信息来作出决策。另一方面,无论谈判的结果如何,我们都不会受到任何损失。”

「むぅ……」

「嗯……」

教如は頼廉が語る策を聞いて思わず唸った。頼廉が単独で直接敵陣へ乗り込み、そこで得た情報を以て再度方針を決める。そこまでして持ち帰った情報を軽々に扱うことなど出来ず、軍議は必ずや降伏へと流れるだろう。

教如听了依赖廉所说的策略,不由得惊叹不已。依赖廉独自一人直接深入敌阵,利用获得的情报再次制定计策。为了保持所带回来的情报的可靠性,不会轻易地处理它们,必定要召开军议并倾向投降。

頼廉は本願寺を捨て、武装勢力としての本願寺を解散してでも、宗教としての一向宗を残す腹積もりなのだ。そう教如は確信した。

依靠廉是有意将本愿寺抛弃,即使解散其作为武装势力的身份,也要保留一向宗的宗教性质。这是教如的确信。

(そうはさせん! 拠点としての本願寺を失えば、求心力を失って組織を保てなくなる)

(不会让你得逞的!如果失去了作为基地的本愿寺,就会失去凝聚力,无法维持组织)

「無論、こちらが会いたいと望んで、すぐに会える相手ではございませぬ。その手筈を整える間、静子に何を問い、何を告げるかを相談いたしましょう」

“无论我们是否希望见面,我们无法立即和对方见面。在准备好一切之前,让我们与静子商量应该询问和告诉她什么。”

本心は最初から決めておる癖に、白々しい事をと教如は心の中で吐き捨てた。

心中虽然早已决定了,但教如仍然嘴硬地说出了无稽之谈。

二月に入り、織田家からの養子である四六(しろく)や器(うつわ)を受け入れた静子の生活も落ち着きを見せる。外交を禁じられたとは言え、領主である以上は領地運営に関する仕事が発生し、静子でなければ判断できない事案も溜まってきた。

进入二月后,接受织田家收养的四六和器的静子的生活也变得平静。虽然被禁止进行外交,但身为领主必须处理领地运营的工作,而一些只有静子才能判断的问题也开始积累。

静子に休息を取らせるため、家臣達で極力作業を代行していたが、ついに静子が現場復帰せざるを得なくなった。

为了让静子休息,家臣们尽可能地代替她工作,但最终她不得不现场复工。

仕事を再開すれば、公(おおやけ)の時間が多くなり、覿面(てきめん)に四六や器と接する時間が削られる。しかし、四六や器が何不自由なく暮らすためにも、仕事を疎かにするわけにはいかない。

如果重新开始工作,会有更多的公共时间,因此与四六和器的接触时间会减少。 但是,为了让四六和器能够无忧无虑地生活,不得不认真对待工作。

仕事と家庭の板挟みとなり苦悩する父親の気分を味わいつつある静子であった。

静子开始感受到父亲在工作和家庭之间挣扎的苦闷心情。

「……よし、これで良いでしょう」

"好的,就这样行了"

午前一杯を使って、溜まっていた決裁文書を片付け終えると、自室で簡単な昼餉を取った。流し込むようにして食べ終えると、服装を改めて応接間へと向かう。

使用早上的一个小时,处理积压的审批文件后,在自己的房间吃了简单的午餐。匆匆吃完后更换了衣服,去了客厅。

「ただいま戻りましてございます」

“我已经回来了”

「ご苦労様です。早速ですが報告をお願いします」

"辛苦了,请马上进行汇报。"

応接間では、長らく東国へ情報取集に向かっていた真田昌幸が待っていた。現在、静子配下の将たちは、才蔵を残して全て出払っている。

客厅里等待着长期前往东国搜集情报的真田昌幸。目前,静子麾下的将领们都出门了,只留下才藏在家中。

長可は信長の命を受け、近江一円の治安維持活動に駆り出され、慶次は手隙となっている静子の領内を一人で見回っていた。高虎は相変わらず安土城築城のため、黒鍬衆を率いて近江に留まり、足満は西国への諜報活動と上杉家に対する顔つなぎとして忙しく立ち回っていた。

长可奉命于信长之下,负责在近江一带维持治安,而慶次则利用空隙巡视静子的领内。高虎则一如既往地率领黑鍬衆在近江筑造安土城,而足满则忙于对西国进行间谍活动,并在与上杉家的交往中起到重要角色。

驚くべきことに長可以外の全員が、静子が命じての行動ではなく、自発的に行動指針を定め、静子の許可を受けて動いていた。

令人惊讶的是,除了长,全部人员都不是受静子命令行动,而是自发行动并得到静子批准。

それ故に、いくら静子の身辺を探ったところで、各地に散らばった将たちの思惑は掴めない。

因此,无论搜查静子的身边有多少,也无法把握各地散落的将领们的想法。

「やはり尾張と美濃の影響範囲外の市場は、縮小傾向にありますか……」

“显然,尾张和美稠以外的市场正在缩小。”

「はい。三河は節約気味で済みますが、以東の市場は物流自体が減り、緊縮状態にあります」

“是的。三河地区虽然有所节约,但东部市场整体物流减少,处于紧缩状态。”

静子は昌幸に東国に位置する各市場の調査を命じていた。その結果として、各国の市場規模が徐々に縮小していっていることが判明した。

静子命令昌幸调查位于东国各个市场的情况。结果显示,各国市场规模逐渐缩小。

これが意味するところは二つ。一つは長く続いたいくさによって、働き盛りの男手が失われ、物資の生産力及び購買能力自体が落ちたこと。

这意味着两件事。其一是由于长时间的战争,工作能力强的男性不复存在,物资生产力和购买力都下降了。

もう一つは、各国ともに経済状況が悪化し、市場へ回せる金が枯渇しつつあるということだ。これは戦時統制による緊縮財政をとりつつ、次なるいくさの準備をしているとも考えられるが、昌幸の調査によると軍需物資の流通自体が減っているため、本当に余裕がないのだということが窺えた。

另一个问题是,由于所有国家的经济状况都在恶化,他们可以注入市场的资金正在枯竭。尽管可能正在通过战时控制采取紧缩财政的方式准备下一场战争,但根据昌幸的调查,由于军需物资的流通正在减少,这表明他们真的没有太多余地。

市場から金が失われれば、商売は成立しなくなり、そもそも市が立たなくなる。市が立たないのであれば、利に敏(さと)い商人たちがわざわざ危険を冒してまで足を伸ばす筈がない。

如果市场失去了资金,商业就无法继续存在,甚至市场本身也将倒闭。如果市场不存在,那么那些对利润敏感的商人们就不会冒险前来。

沈みゆく船から鼠が逃げ出すように、先を争うように撤退し、以降は寄り付かなくなってしまっていた。

就像老鼠逃离正在沉没的船般,他们争先恐后地撤退了,并从此不再回来了。

「真田殿には引き続き調査をお願いします。次はもう一歩踏み込んで、民草の生活がどのようになっているか調べて下さい」

请继续调查真田大人。接下来更深入地调查,了解民草的生活状况。

「ははっ」

"哈哈" (ha ha)

「それから任務にあたった間者には、十分な休息をとらせるようにしてください。疲労を残して判断力が落ち、ボロを出して足がついても困ります」

“请确保派遣执行任务的间谍得到充分的休息。保持疲劳状态会导致判断力下降,泄露情报将带来麻烦。”

「はっ。仰せのままに」

“好的。遵命。”

報告を終え、次なる任務を受けた昌幸は応接間から退出する。そして入れ替わるかのように、足満が応接間へ姿を見せた。狙いすましたかのようなタイミングに静子は驚くが、そのまま応じることにした。

完成报告并接受下一个任务后,昌幸离开了接待室。随后,足满出现在接待室,就像交替一样。静子感到惊讶,仿佛是有针对性的时机,但她决定照常应对。

「まずはご苦労様でした。それで、何か手がかりは掴めましたか?」

“首先辛苦了。那么,有什么线索吗?”

「本願寺に動きがあった。顕如は未だ方針を決定してはおらぬが、下間(しもつま)頼廉を筆頭とする降伏派と、教如が主導する抗戦派が対立をしている。そして軍議の場で、頼廉が面白い話をしたそうだ」

「本愿寺有所动静。顯如尚未决定方针,但降服派以下间顺廉为首,与抗战派由教如主导产生了分歧。在军议上,顺廉似乎讲了一个有趣的故事。」

「面白い話とは?」

「有趣的故事是什么?」

静子は首を傾げて足満に問い返す。足満は小さく笑みを浮かべて応えた。

静子歪着头反问足满。足满微笑回答。

「静子、お前と会見して今後の方針を決定するようだ」

「静子,似乎要与你会晤,决定今后的方针。」

「ふーん……え? はい!?」

"哦……哎? 是的!?"

静子は一瞬聞き流しそうなり、慌てて足満に近寄ると、声を落として耳打ちする。

静子一瞬间听起来似乎不在意,赶紧靠近了足满,轻声耳语。

「私は外交を禁じられているから、そもそも会う会わないの判断ができないよ。第一、政治から遠ざかっている私に会ってどうしようっていうの?」

“我被禁止从事外交工作,因此本来就无法判断见面或不见面。其次,作为远离政治的我,你见我有何用?”

「さてな。奴ならぬわしには判らぬが、奴には貴様と会うことによって得るものがあると踏んだのやもしれぬ。もしくは静子と会うということ自体が目的であるという見方もある」

“不知道啊。虽然我不了解他,但他可能通过与你见面获得什么东西。也有可能是见到静子本身就是目的,这是一种解释。”

「ああ! 私と会談をすること自体を政治的駆け引きに利用するつもりか、迷惑な話だなあ……」

"啊!你打算把和我进行会谈本身利用为政治策略,真是烦人的事情啊……"

足満の言葉を受け、しばし宙を睨んだまま考え込んでいた静子だが、相手の狙いを理解して嘆息した。相手の内情はわからずとも、相手の立場と目指すところが判れば、その思惑は自ずと透けて見える。

在听完足满的话后,静子仰望着天空沉思了一会儿。然而,她很快就明白了对方的目的,并感到唏嘘不已。即使不了解对方的内情,只要了解对方的立场和追求目标,那么对方的险恶用心就会显而易见。

「つまり頼廉は、勝ち目のないいくさを継続するよりも、早期に降伏して生き残りを図っているんだね」

“也就是说,严嵘不是在进行没有胜算的战斗,而是早日投降,设法生存。”

頼廉は己の胸の裡(うち)を読まれているなどとは夢にも思わないだろうが、静子を女だと侮ってはならない。

莫要小视静子的女子身份,尽管顾及折价的心情可能未曾在廉心智中起过作用。

静子は現代に於いて歴女(歴史好きの女性)に分類される。『歴史は繰り返す』という言葉があるように、長期的視点で歴史を俯瞰(ふかん)すると度々似たような出来事が繰り返されているのが判る。

静子被归为现代的历史爱好女性类别。正如有一句话说的那样,“历史会重演”,当以长期的视角俯瞰历史时,人们会发现类似的事件经常重复发生。

日本はおろか、世界の歴史についても体系化した知識として身に着けているのだ。類似の事例から相手の狙いを推測するなど容易いことであった。

甚至不仅仅是日本,还了解了世界历史作为系统化的知识。从类似的案例中推断出对方的意图也变得更加容易了。

静子の読みでは、頼廉の狙いは講和にある。彼は既に織田を敵対者とみておらず、本願寺内部の抗戦派を切り崩すことを主眼に置いているだろう。

据静子的阅读,信长所追求的目标是和平。他已经不再视織田家为敌人,而是主要瞄准本願寺内部的抗战派,试图瓦解他们的抵抗。

ゆえに頼廉は静子との会談が成功しようがしまいが、講和への道筋をつけるべく行動すると思われる。教如をはじめとする抗戦派にとって不利な状況での講和は受け入れがたいが、頼廉はこれ以上状況が改善することはないと判断していた。

因此,依赖廉被认为将采取行动以建立通往和平的道路,无论他与静子的会谈是否成功。在抗战派中,包括教如在内,和平在不利的情况下是难以接受的,但依赖廉判断形势已经不会再有所好转。

如何に織田家とて、本願寺程の巨大宗教組織を完全に根絶やしにする事など出来はしない。信心は個々人の内心の問題であるため、如何に信長とて踏み込むことの出来ない領分だ。

无论織田家如何努力,完全铲除与本愿寺同等规模的巨型宗教组织是不可能的。信仰是个人内心的问题,即使信长也无法干预。

故に宗教組織との対立は長く続く、そしてそれ故に講和に条件を取り付けることも可能となる。本願寺側が信徒を纏めつつ、武装解除に至るのが最も穏便かつ、理想的な終戦方法となるからだ。

因此,与宗教组织的对立长期存在,因此也有可能在此基础上促成和平并谈判条件。本愿寺一方团结信徒,实现武装缴械是最为温和和理想的停战方式。

ここにこそ頼廉の活路が存在した。たとえ教如達抗戦派と対立し、宗派を二つに割って相争うことになったとしても、どちらか片方だけでも生き残る道を選ぶ。

正是在这里,才存在着依靠廉的出路。即使与教如抗战派发生冲突,甚至将宗派分为两个相互争斗的阵营,也必须选择留下生机的一方。

それはかつての同胞から裏切り者と罵られ、仮に講和が出来たとしても誰からも褒められない修羅の道であった。頼廉はそれらを覚悟した上で、静子との会談に挑もうとしていた。

这是一条修罗道,曾被他的同胞称为叛徒,在即使得到和平的情况下,也不会受到任何人的赞扬。在做好了这些准备之后,依赖于它, 隆廉已经开始挑战与静子的会谈了。

「私が頼廉に会わなければいくさが長引き、会えば政治の駆け引きに巻き込まれる。会談前に頼廉の身に何かあれば、我々が痛くもない腹を探られるため、内部抗争の凶刃から頼廉を守らなければならないか……」

「如果我不与廉谒见面,则战争将会拖延,而如果见面,就会卷入政治交易中。如果在会谈之前有什么事情发生在廉谒身上,我们必须保护他免遭内部斗争的伤害,否则我们将被怀疑和探寻。」

全く以て嫌らしい策を講じてくれる。どう転んでも頼廉は自らの命以上に失うものはないが、賭けに勝てば相応以上の成果を引き出せてしまう。

他将采取非常讨厌的策略。无论如何,Yoroku不会失去比自己的生命更多的东西,但如果赢了赌注,他就可以获得比他预期更多的成果。

「いくら私でも、流石に不愉快だね。本願寺に利用されるのも癪に障るし、ここは第三の選択肢を選ばせる必要があるね」

"即使是我,也觉得很不愉快。被本愿寺利用太恼人了,现在需要选择第三条路。"

静子が笑いながら語ると、足満は任せろと言わんばかりに頷いた。

靜子笑著說,足滿點頭仿佛在說「就交給我吧」。

暦は二月に入った。信長が安土へと居を移して一月が経とうとしていたが、表面上は何事もなく過ぎていった。本願寺も頼廉の行動を見守るつもりなのか、朝廷経由で静子との会談の打診が届き、信長の判断を待つ状態となった。

历法已经进入二月。信长已经搬到了安土,一个月已经过去了,但表面上却一切正常。本愿寺是否打算观察依赖,透过朝廷向静子提出会谈的请求,并等待信长的决定。

信長自身は第三次織田包囲網が形成されないよう、方々の力関係を調整しながらお膝元である安土の整備に力を入れていた。

信长自身为了避免第三次织田围攻形成,他在本地安土注重整备工作,同时调整各方力量关系。

二月下旬になると、信長は朝廷より正三位(しょうさんみ)の位と、右近衛(うこんのえの)大将(だいしょう)の職を賜った。

二月下旬,信长从朝廷授予正三位位阶和右近卫大将职位。

信長は遠からず従二位に叙せられ、内大臣を兼務することになるだろうと朝廷内でまことしやかに噂されていた。

据传闻,信长不久将被封为従二位,并兼任内大臣。

時を同じくして仁比売(ニヒメ)が従三位(じゅさんみ)に叙せられ、静子も精勤が評価され従三位を賜ることになった。

同时,仁比売被任命为従三位,静子也因其努力被评价并授予従三位的称号。

仁比売には併せて権中納言に任ぜられたが、静子には官職が与えられなかった。

仁比卖被任命为权中纳言,但静子没有被赋予任何官职。

「朝廷が両天秤に掛けて、双方から利益を引き出そうとしているのかな?」

"朝廷是否将双方放在天平上,试图从两方面获得利益?"

静子は信長から送られてきた朱印状を眺めて呟いた。

静子看着从信长那里寄来的赤印章,喃喃自语。

未だ公の場に姿を見せない仁比売だが、信長の手により折に触れては帝との文のやり取りが続けられているとのことだった。

据说仁比卖未曾在公开场合露面,但据信长的手下,他们时常与天皇进行书信往来。

そろそろそのような人物はいないと露見するのではないかと、静子は危ぶんでいた。

慢慢地静子开始担心,是否会暴露出这样的人已经不存在了。

(まあ露見しそうになったら病死したことにして、盛大に荼毘に付して誤魔化すんだろうな……)

(嗯,如果曝光的话,他们肯定会编出我病死的借口,然后大张旗鼓地火化掉,掩盖真相吧……)

元々病弱で、外にも出られぬ設定の仁比売である、急逝したとしても不思議に思われることは無い。

原本就是病弱且无法出门的仁比卖角色,即使突然去世也不会让人感到奇怪。

後見人である信長が葬儀を執り行えば、これに異を唱えられるものなどいはしない。

如果后见者信长主持葬礼,那么就没有人会反对。

「さてさて、そろそろ領主のお仕事をしないとね。尾張だけじゃなく、奇妙様の美濃の面倒も見ないといけないから大変だ」

“那么那么,差不多该去做领主的工作了。不仅仅是尾張,还有奇妙大人的美濃也要照料,所以很繁忙。”

信長から美濃を引き継いだ信忠は、静子に美濃の仕置き(領主としての統治全般)を命じた。信忠の直臣達にとっても寝耳に水の出来事だったようであり、揃って信忠に命を覆すよう諫言した。

信忠接管美濃自信长后,命令静子执掌美濃的治理与事务。这对信忠的直臣们也是出乎意料的事情,他们纷纷劝谏信忠撤销此命令。

しかし、信忠は彼らの諫言を聞き入れず、彼らに向かって語ってみせた。

然而,信忠没有听从他们的劝告,而是向他们发表了讲话。

「何か勘違いをしているようだが、わしは静子に美濃の国主となれと命じた訳ではない。わしは今まで実務に携わってこなかったゆえ、美濃の事情に通じておらぬ。それでなくとも父上からの引継ぎで現場は混乱しておろう、ならばこそ従来のやり方を心得ているものに助力を請うのは当然のこと。皆の言い分も判るが、静子抜きで美濃や尾張を回すことなど夢物語に過ぎぬ。先達のやり方を間近で学べる機会をふいにしてまで、静子以上に自領を繁栄させ得る手立てがあるなら申して見よ」

“你好像有些误解,我并没有命令静子成为美濃的国主。由于我以前没有参与过实际工作,所以不了解美濃的情况。此外,父亲的交接可能会导致现场混乱,因此向了解传统方法的人求助是理所当然的事情。我理解大家的观点,但没有静子就没法管理美濃和尾張。如果有能够使自己的领土繁荣昌盛的手段,大家可以申请了解,但是不能放弃向前辈学习传统方法的机会。”

あくまで静子は水先案内人であり、最終的な判断は全て信忠が行う。場合によっては外交の場にも同行させることもあり得るが、それはあくまでも信長や信忠の名代とすると言い切った。

始终以静子为向导,最终决策由信忠作出。有时可能会在外交场合陪同,但这只是代表信长和信忠去。

主君にこうまで言われては、家臣としては従う他なかった。静子自身としても野心とは無縁の性格であり、勝手に動くつもりなどサラサラないのは言うまでもない。

听到主君如此说,作为家臣只能顺从。静子本身性格与野心无关,自然不会自作主张。

「滞らせることが出来ない大事業は愛知用水(あいちようすい)と木曽三川の整備かな?」

无法拖延的重大事业是爱知用水和木曾三川的整备吗?

愛知用水は知多半島全土を潤す上下水道用の用水だ。その用途は農業だけに限らず、工業や商業まで幅広く見積もられている。事業に着手して既に数年が経過したが、まだまだ見果てぬ夢と言った状態だった。

爱知用水是知多半岛全境的上下水道用水,用途不仅仅限于农业,还广泛用于工业和商业。虽然这个项目已经进行了几年,但它仍然是一个无限潜力的梦想。

それでも天下人の行う一大公共事業であり、今後の莫大な利益が見込めるとあれば、資金力のある有力者は挙(こぞ)ってこの事業に投資した。

即使如此,如果天下人进行一项大型的公共事业,并且预计将来会获得巨大的利益,具有资金实力的有权势者会齐心协力地投资该项目。

工事自体の基礎的な技術は実証されており、後は単純に労力を必要とするだけであるため、安定した利益が見込める事業となっていた。

工程本身的基础技术已经得到证明,因此只需要简单地付出劳动力,这将成为一项可以稳定获利的业务。

問題となっているのは木曽三川の整備であった。木曽川と長良川、そして揖斐川(いびがわ)の三川は下流部で複雑に絡み合っており、流量に対して川底が浅いため度々水害を起こしていた。

问题在于对木曽三川的整治。木曽川、长良川和揖斐川三条河流在下游地区错综复杂地交织在一起,由于河床深度浅,容易发生洪水灾害。

上流部や中流域に貯水池を設けようとも、抜本的な解決を図らない限り、水害の根絶は叶わない。

即使在上游或中游设置水库,如果不采取根本性的解决措施,水灾根本无法解决。

「まあ、流域全土が織田家の支配下に収まっているのは評価できるかな」

“嗯,可以评价的是,整个流域都落入了織田家的统治之下。”

史実では治水技術の未熟さからくる工事自体の難易度に加え、各地域を治める領主の利害が対立し、水利を巡って争ったため治水対策は遅々として進まなかった。

在历史上,由于治水技术的不成熟,加上各地区的领主之间的利益冲突,围绕水利问题展开了争斗。因此,治水措施迟迟未能推进。

しかし、今や美濃、尾張、伊勢と流域の大部分を占める三国の利害が一致しており、信長というカリスマの号令一下、皆が一丸となって治水対策に取り組んでいた。

然而,现在占据美濃、尾张、伊势和流域大部分的三国利益一致,在信长这个领袖的号令下,大家一致努力,采取了治水措施。

美濃や尾張の利点としては、安定した事業用水が確保できること、洪水による被害を軽減できることが挙げられる。残す伊勢が受ける利益としては、商工業の中心地である尾張との陸路が開通することが大きかった。

作为美濃和尾張的优点,其可保障稳定的工业用水,并减轻洪水造成的损失。伊势所获得的利益是与商贸业中心近在附近的尾張之间的陆路交通开通。

この一点に於いてだけでも、北伊勢が木曽三川に対する治水工事を推進するには十分であった。現状では木曽三川の下流域を渡河するのは難しく、直線距離では尾張に近いというのにその恩恵に与(あずか)れないでいた。

在这一点上,北伊势已经足够推进对木曽三川的治水工程。目前,穿过木曽三川下游地区是困难的,尽管从直线距离上接近尾张地区,但却无法受益。

実際に信長も伊勢侵攻の際に、最短距離を取らずに一度美濃へ出て大回りして伊勢へ向かうルートを選択している。

事实上,在信长攻打伊势时,他选择了绕路前往美濃再到伊势,而非直接从最短距离攻入的路线。

海路を使えば尾張とも交易出来るとは言え、陸路が使えないようでは交通の要衝とはなり得ない。尾張に端を発した隆盛の波に取り残されないためには、是が非でも尾張から伊勢への大動脈を通す必要があった。

如果只用水路,虽然可以和尾张进行贸易,但如果无法使用陆路,就不能成为交通要冲。为了不被起于尾张的隆盛浪潮所落后,必须非常必须要在尾张至伊势之间建立一条大动脉。

「皆が目的に向かって邁進しているって言うのに、兄弟喧嘩に巻き込まれて災難だったよ……」

“在大家都在朝着目标努力的时候,我被卷入了兄弟之间的争吵中,真是不幸啊……”

静子は図らずとも信長の直系兄弟の確執に巻き込まれることとなった。

静子不经意间卷入了信长直系兄弟之间的纷争。

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